BLack†NOBLE
「さっき、レイジさんて熊みたいな男が来て、柏原のこと心配そうにしてたわよ。私がもう少し眠らせてあげて、って言っといたのよ。優しいでしょ?」
彼女は、得意気に顎を突き出した。その仕草に笑みがこぼれそうになる。
頭痛は、治まっていた。肩の痣は、まだ少し痛む。
思い返せば、丸二日間睡眠というものをほとんどとっていなかった。
彼女を抱き締めた安堵感だけで、眠りに落ちてしまったのだろう。
「柏原は、寝てるくせに抱き締めた腕をといてくれなくて、大変だったのよ」
ベッド脇には俺が脱ぎ捨てたトレンチと破れたシャツがそのまま放置されている。
「茉莉果脱出大作戦で何とか一命をとりとめたけど、脱出したと思ったら腕を掴まれて、離して、って言っても、柏原は離れなくて……私のこと大好きだからって、困っちゃうわよ」
上半身何も身に付けていないとフィレンツェの夜は少し肌寒い。
気だるい体を起こし、素足で彼女の元に歩み寄る。
「ギャッ? せっかく脱出したのに?」
ソファーに座り乱暴に彼女を抱き寄せると、抗議の声があがった。 後ろから抱き締め、彼女の髪に顔を埋める。