BLack†NOBLE


『はい、出血量が多く。病院に搬送された際にショック状態で非常に危険な状態でした。弾丸は脇腹を斜めに……』


 医者は自分の腹を指差し、腹から脇へ貫通させるジェスチャーをした。


『内臓の損傷は、手術が成功したので回復を見込めます。今は、点滴で合併症を防ぐために抗生剤をいれています。

 あとは数日中に意識が戻ればひと安心です』


 蒼白い腕には、透明の液体を入れるために細い針が射されている。

『意識が戻らないこともあるのか?』


『確率的には30%』


『そうか……、容態が悪化したらどの様な目に遭うかわかってるだろうな?』


 医者は、フレームレスの眼鏡を引き上げると口元を緩ませた。


『この世界は、よく存じ上げておりますよ』と口の中で呟く。


『意識が回復し、傷が完治すれば充分すぎる報酬をとらせよう。治療に必要なものは何でも言ってくれ』


 蔵人の命が買えるなら、いくら支払っても惜しくない気分だ。

 ムカつく奴だけど……とどめ刺していいのは、この俺だ。




 医者は、嫌な笑みを浮かべ『ありがとうございます』と深く頭を下げた。



 コイツ、 好感は持てないが、金の為なら何でもやるタイプだ。


 マフィアの面倒を見るくらい、金に見境のない馬鹿だろう。


< 263 / 509 >

この作品をシェア

pagetop