BLack†NOBLE

『……瑠威、ありがとう。瑠威がいなかったら、もっと辛かった。もうしばらくこうしていていい?』


『蔵人がヤキモチ妬くかもしれないだろ?』


『……ははは、絶対妬かないよ。ねえ、私ほんとにクロードに愛されてる?』


 アリシアは、子供みたいに目をゴシゴシと擦ると俺から離れた。


『多分な。船が奇襲受けた時の蔵人の顔をお前にも見せてやりたかった』


『瑠威、なんか変わった? 優しくなったねー。クロードと仲直りできたんだ!』


『仲直りなんて……』


『そうかな? 前の瑠威は必死でよかったのに、今は必死さが全然なくなっちゃった。余裕の瑠威も悪くないけどね』




 何も答えられない……確かにそうだ。

 ローザの屋敷で蔵人と交わした会話を思い出す。


「アリシアはただ存在していればいい」と言った蔵人に俺は反対意見を述べていた。



 それなのに、この抗争と自分の置かれた状況の本質を知ると、俺はあっさり彼女を手離してしまった。




 アリシアが、俺の頬をキスをする。




 そして、俺から離れると意識の戻らない蔵人に寄り添った。


『愛してるよクロード。早く目を覚ましてね』と囁き、額を撫でて愛おしいそうにキスをした。


 蔵人は、ただ沈黙の中でキスを受け入れる。


 俺は、少し蔵人に嫉妬した。自分で決めたことなのに決心が揺らぐ。彼女が日本に帰ってしまえば、こんな気持ちなくなるのかもしれないが……アリシアがいる蔵人が羨ましかった。









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