BLack†NOBLE

────夜風の心地好いバルコニー。シチリアよりは、肌寒いがいい季節だ。

 イタリアと日本の気候はよく似ている、ただ日本のような嫌な湿気がなく通年乾燥している。



 視界の先には広がる綺麗な庭園と高くそびえ立つ壁。ガーデンアーチの深紅の薔薇の蕾。日の出とともに、また大輪に咲き誇るだろう。


 小さな泉からは水が流れる音が響いている。

 分厚い壁の上には監視台が設置されていて、数名の男たちが二十四時間警備を続けている。


 そして庭園の隅にも銃をぶら下げた男たちが、チラチラと見える。


 物騒な場所だな。 ここなら軍隊が乗り込んできたとしても、ある程度応戦できるだろう。



 ウォッカトニックの入るグラスを傾け、グイッと飲み干す。


「はぁ……」それから盛大なため息。


 何をしているんだ……俺。



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