BLack†NOBLE
……コツン
何かがバルコニーにあたる音がした。護衛たちは、何事もなかったように警備を続けている。
『誰だ?』
「柏原……下よ」
……コツン。小石が一粒、バルコニーに落ちる。
「……茉莉果? 石を投げるとは、紫音家のご令嬢たるもの許せぬ行為だな」
俺がいるのは二階のバルコニーだ。
彼女は大きなストールを巻き付け、庭園のガーデンアーチから小石を投げていた。
淡くライトアップされた庭園。
彼女の表情は、ここからでもよく見えた。
ムッと眉をしかめると、地面から石を拾い「えい」と俺に向かって投げてきた。
「危なっ……」
さっきより大きな石だ。寸でのところで避けると
……ガツッ!
石がバルコニーにあたり、ぶつかり合う大きな音が屋敷に響く。
護衛が反応した。