BLack†NOBLE
彼女の部屋の明かりが消えていたので、もう眠りについたか、ここから去ってしまったのかと思っていた。
彼女はキョロキョロと辺りを見渡し、今度は両手で掴まないと持ち上がらないような石を見つけたらしい。
「お嬢様! おやめください!」
大声を出すと、護衛たちが一斉に銃を構えた。
『違う! 銃を下ろせ!』
慌てて指示を出すと、護衛たちは庭にいるお嬢様の姿を確認してから銃を下ろす。
「柏原、ここに来て」
「……もう別れただろ? 今更何も話すことなんてない」
明日には、貴女だけを日本に帰さないとならない。今目の前に彼女を置いてしまえば、決心が鈍るかもしれない。
「お願い……ここに来てよ」彼女は大きな石を持ち上げた。
「待って!」
あの大きさを……足に落とせば大怪我だろっ!
「わかった! すぐに行く。お願いだから、石を地面に置け!」
両手を上げて、石を下ろせとジェスチャーする。
お嬢様が、それを地面に下ろしたのを確認してから急いで屋敷に飛び込み、部屋を出て通路を走り階段を降りた。
ジェロは、何しているんだ?
アイツ……何の役にもたたないな!