BLack†NOBLE
大きな体で低く頭を下げたレイジ。
太陽は高度を増して、賑やかな光で屋敷を包む。庭で男たちが忙しそうに動きまわっていた。
『ヘリが直にきます。セシルは摘発されたと聞き先にミラノへ向かいました。ですが、瑠威様……』
レイジが指差すほうに目を向けると、彼女がいた。一階のティールームから続く、庭にせり出したテラスから俺をすごい形相で睨みつけている。
「柏原!」
彼女に手招きされると、俺は逆らえない。黒尽くしの男たちが忙しく動き回る中、彼女の元に歩み寄る。
テラスのステップを踏んで彼女の目の前までやってきた。ニナとジェロもいた。
「まだ何か?」
「何かじゃないわよ!」
彼女は両手を伸ばすと、俺の両頬を摘んだ。
「コワい顔してるわ。マフィアバージョンは性格の悪さが全面的に出ちゃってるのよ。たまにはマフィン焼いてた頃の執事バージョンを思い出してね」
彼女は頬から手を離すと、「頑張って」と言った。その手に軽くキスをした。
「大人しくしていてくださいね」