BLack†NOBLE

 大きな体で低く頭を下げたレイジ。

 太陽は高度を増して、賑やかな光で屋敷を包む。庭で男たちが忙しそうに動きまわっていた。


『ヘリが直にきます。セシルは摘発されたと聞き先にミラノへ向かいました。ですが、瑠威様……』


 レイジが指差すほうに目を向けると、彼女がいた。一階のティールームから続く、庭にせり出したテラスから俺をすごい形相で睨みつけている。



「柏原!」


 彼女に手招きされると、俺は逆らえない。黒尽くしの男たちが忙しく動き回る中、彼女の元に歩み寄る。


 テラスのステップを踏んで彼女の目の前までやってきた。ニナとジェロもいた。


「まだ何か?」


「何かじゃないわよ!」



 彼女は両手を伸ばすと、俺の両頬を摘んだ。


「コワい顔してるわ。マフィアバージョンは性格の悪さが全面的に出ちゃってるのよ。たまにはマフィン焼いてた頃の執事バージョンを思い出してね」


 彼女は頬から手を離すと、「頑張って」と言った。その手に軽くキスをした。


「大人しくしていてくださいね」




 
< 326 / 509 >

この作品をシェア

pagetop