BLack†NOBLE
『瑠威は、目覚めたか?』
『いえ、まだです! あの人数相手にあそこまで抵抗するとは予想外でした。少しやりすぎました。死んでませんか? コイツ……』
ガツッと何かが砕けるような音がすると、俺を『コイツ』呼ばわりした奴が、床に転がる。
相変わらず蔵人は、暴力の中で生きているな。
『次に瑠威をそんな風に呼んだら、許さない』
流暢で美しいイタリア語。丁寧に発音される母音と子音に、つい聞き入りたくなるような声だ。
「瑠威……気がついてるんだろ? 顔をあげろ」
そして、騙しのきかない相手だ。
霞む視野で、最大限の恨みをこめて蔵人を睨み付ける。
「暴れるから、そういう目に遭うんだぞ? 少しは落ち着いたかと思ってたのに、相変わらずだな」
そっちこそ……
お前は、何も変わっていない……
「彼女は……?」
蔵人が、嬉しそうな顔をする。
奴を楽しませてやる義理はないが、それより茉莉果お嬢様の安否が気になる。
俺だけなら、殺されようが何をされようが、別にいい。
彼女が無事ならそれだけでいい。