BLack†NOBLE



 鼻につくメンソール系の匂い。

 薬品が染みると「っく」と情けない声が出てしまう


『瑠威様、申し訳ございません……痛みますよね。ですが、この地に伝わる伝統的な薬です。しばらく我慢なさってください』


 早口に告げられる弁明は、俺が蔵人に言い付けないか……それが心配なのだろう。

 化粧気のない顔に、濃紺の質素なワンピース。

 カトリック信者か?

 この地では、いまだに教会が薬の調合を行う。

 サンタマリア・ノヴェッラ教会などは最古から、信者への投薬を行い、様々な病を治療してきたとされている。


 手際よく巻かれていく、真っ白な包帯。女の顔が近づいたところで、そっと耳元で囁く。



『聞きたい事がある……俺と一緒にこの屋敷に運ばれてきた女はいるか?』


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