BLack†NOBLE
『ひどっ! 意地悪!』
ニッと笑ってアリシアをソファに突き飛ばすと、その横にはジェロが茉莉果お嬢様の荷物を置いていた。
ラウンジには、メルフィスファミリーが集まってきていた。
『人気あるな……短い滞在だったくせに』
カルロがクツクツと笑う。レイジは、ずっと納得のいかない顔をしている。
『瑠威様……』
『頼むから、お前は泣きながら抱き着いてくるなよ?』
またヒクヒクと泣きながら抱きついてくるアリシアを押しながら笑うと、レイジも微妙な笑い顔になる。
『いえ、大丈夫です。ですが、瑠威様の居場所はここだと信じています』
『……そうかな? 蔵人を頼んだからな』
『もう同じミスはいたしません』
レイジは笑い顔のまま、瞳に涙を溜め込んだ。
『瑠威様は、私たちのファミリーだ』
『ああ、お前の口車にのせられて掟に誓ったからな』
『それだけでは、ございません。
瑠威様にもクロード様と同じ様に人を惹き付ける"心"をお持ちだ。
たった数日の滞在で瑠威様と関わったファミリー皆が寂しい思いをするだろう』
レイジは、それ以上何も言わずに集まった仲間を見渡した。
賢く忠誠心が熱い。大きな体で、極め細やかな神経を通わす男。
若干脆さはあるが、それに勝る安心感がある。
仲間なんてものを頼りにしたことはなかった。自分以外の人間は、使える奴と使えない奴の二種類しか存在しないと思っていた。
だから、信じれる奴というカテゴリーを与えてくれたコイツらには感謝している。