BLack†NOBLE



  遠慮なくソファーに座ると、沈み込むような良い座り心地。贅沢だな……


 座った視界の先には、今通過してきたばかりのダンスホールが広がっている。ホール全体が見渡せるように少し高い位置にあり、ステージと大画面もよく見える。

  マジックミラーなのかもしれない、向こうからはこちらが見えていない。


  ここは、VIPラウンジというよりオーナールーム。

 このナイトクラブとカジノは、蔵人の貴重な収入源なのだろう。


「いい眺めだろ? 踊っている奴等が、海底の海草に見えないか? 日に当てたら干からびそうな奴等ばかり」


  蔵人は面白そうに笑う。スピーカーから聞こえていたトランスが止むと、目の前のテーブルに料理が並べられていく。




 一瞬、昔を思い出して浮かれている自分がいた。今夜はどんな悪だくみをしようかと考えている自分がいた。




────彼女を残してきたのに、何をしている?





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