BLack†NOBLE
蔵人が片手を上げると、直ぐにワイングラスが一つ運ばれてきた。
既に俺はワインやカクテルを、相当量飲まされている。酔わせて自棄に落とそうとしているんだろうが、飲み方を知らないわけじゃない。
蔵人はグラスをアリシアに手渡すと、俺たちの真ん中に座らせた。
『ボルドー? ブルゴーニュ?』
首をかしげてクスリと笑い惚けた仕草で、ワインの種類を聞く蔵人。
『ブルゴーニュ。ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ』
グラスをテーブルに置くと、アリシアは当然とばかりに顎をあげて答えた。
とても有名な最高級ワインだ。金のかかりそうな女だな。
バーテンが運んできたワインを蔵人は自らが、アリシアのグラスに注ぐ。
『年代物だ。アリシア、
二十歳の女にこの味がわかるかな?』
道化師のような蔵人は、俺にもグラスをとるように『瑠威』と言ってボトルをあげる。
『子供扱いしないで! いつも言ってるでしょ?』
『そうだったな……アリシアは大人の女だ』
三つのグラスが合わさり、ロマネの香りが喉から広がる。癖になりそうな味だ。
蔵人はワインを楽しむとグラスを置いて、アリシアを優しく抱き寄せる。髪を撫でて力強く見つめてから……その唇を奪った。
最低ラインの悪趣味野郎だな。俺に対する当て付けだ。ロマネが苦く感じる。