BLack†NOBLE

 口に手を添えて、クスクスと笑う蔵人。

 あまりにも腹がたって、蔵人の隣に座る女を突き飛ばし、兄の胸ぐらを掴む。


『瑠威様! おやめ下さい!』


 レイジの制止も聞かずに、銃を持つ蔵人の左頬を力いっぱい殴りつけた。

 力が入りすぎて震える拳で、もう一発殴った。



 しらけたままの蔵人は葉巻を噛み、煙を吸い込み、俺に向かって紫煙を吐き出す。


「この野郎……バカにしやがって……」


「バカだろ。あんな女一人にそこまで怒ることない」


 蔵人の唇から赤い血が流れた。俺と同じ血だ……


「今、俺が指示を出せば……瑠威はあの世行きだ。そこまで愛してるか? いつから、そんな男になった」



「……ヤれよ」


 蔵人は眉をしかめた。


「瑠威だって、気がついてるだろ。あの女は、瑠威には相応しくない」


 完全に俺を馬鹿にしている。俺だって、気がついている。


 俺が、彼女に相応しくない。

 ククッと笑った蔵人の左頬に、もう一発力の限り拳を打ち込んだ。

 だけど、今度はすぐに左側から鋭いフックが飛んできた。



「っ!」




 この野郎……
 傷口狙いだ……

 床に投げ倒される。蔵人は銃を机の上に置き、黒いジャケットを脱ぎ捨てたると、直ぐ様強烈な右ストレートパンチが顔面に飛んでくる。
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