BLack†NOBLE


 仕返しに蔵人の腹を蹴り上げる。その攻撃は避けられ、足を払われて床に叩き付けられた。


「心底腹がたつな。オマエは、俺の弟だ。ここで俺と過ごせば瑠威は、昔の瑠威にすぐ戻る……」


 胸元を両手で押さえ付けられ息ができない…。

 苦しさから短い呼吸を繰り返すと、蔵人は手を離し、かわりに怪我をした肩に革靴を押し付けた。



「……っ」



 声が掠れる。


「俺は、“血の掟”には従わない……マフィアなんかにならない……」


 彼女と日本に帰りたい。


────両親の事故は、メルフィスの仕業だ。あれは、単なる自動車事故じゃない。
 
 平坦な道での単独事故で、あそこまで車が大破するなど考えられない。

 しかも几帳面で気難しい父が、ハンドル操作を誤るなど絶対にない。



 外交官の父は、ずっとメルフィスの一味に狙われていたんだ。どうしてかなんて理由はわからないけど、蔵人だって、それを知っていた。


 自分の両親をマフィアに殺されて、それなのに、何故マフィアになった?




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