BLack†NOBLE


 

 彼女は、俺が見つけた唯一の存在だ。


 両親を失い、兄に裏切られ、メルフィスを憎み、故郷を離れた俺が出会った第二の故郷。



 俺を信じて、俺を待っていてくれる。


 だから俺も、彼女を信じて、彼女を迎えに行く。



 蔵人の銃が額に押し当てられた……


「頭にきた。何がなんでも茉莉果には会わせない」



 そうか……だから、俺は簡単に死ぬわけにはいかないんだ。


「蔵人は俺を撃てない」


 俺を弟と思うならば────



 
 銃口を掴むと、力を振り絞って蔵人を押し退けた。



「こっちだって怒りの臨界点はとっくに超えている。何がなんでも彼女に会いに行く」


 
 暴発したら片手が吹き飛ぶだろう。それでもかまわない。

 かなり荒業だが、力尽くで銃を蔵人から奪う。


 予想通り、蔵人は引き金を引かなかった。




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