BLack†NOBLE


『アリシア、服を着ろ』

『えっ?』


 最終的な凌辱までに至らなかったようだ。当然だろう。


『はやくしろ、馬鹿女』


 銃口の標的をまた蔵人に定めて、ホルターネックを乱暴に掴むと、アリシアの首に絡ませる。

 長年執事として働いてきた。女の着替えなど片手があれば充分だ。



『アリシアをどうする気だ?』


 蔵人は他人事のように訊ねた。


『好きなようにしていいんだろ?』


 着衣を整えたアリシアを後ろから抱きしめる。 蔵人が、嬉しそうな顔をした。




『銃を置いて、その扉を開けろ』



 アリシアを盾にして蔵人に銃を突き付け、護衛に命じる。


『なるほどね……俺から逃げるわけか』


 蔵人は、優雅にロマネ・コンティを口にした。


『レイジ、聞こえなかったか? おまえ達のボスが死ぬぞ? 俺は、別に命は惜しくない』


『瑠威様……あなたとは争いたくない……』


 レイジは眉を寄せて、悲しそうな顔をする。


『ちょっと! 私のクロード殺さないでよっ!』

 俺の放った言葉を聞いて、暴れ出したアリシア。


 耳元で、可能な限りの甘い声で囁やいてやる。

『大丈夫だ……少し協力してくれたら、クロードは殺さない。おまえも、すぐに解放してやる』


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