BLack†NOBLE


 それを聞いて大人しくなったアリシアは、半信半疑で俺を睨みつけてくる。


『絶対に?』

『ああ、絶対に』


 フンと鼻を鳴らして、大人しくなる。

 簡単に騙されるんだな? 銃をかまえた奴等の、盾にされているのにお気楽な女だ。

 やっぱり、ただの馬鹿女。何故、蔵人はこんな奴と結婚したのだろうか……


『レイジ、はやくしろ! 扉を開けて、俺が外に出る』


『クロード様いかがいたしましょう?』


 レイジは助けを求めるように、蔵人の指示をあおぐ。


『好きにさせてやれ、瑠威、外は危険が多い。死ぬなよ? どちらにしても瑠威は俺の元に帰ってくる気がするけどな』


『これ以上、蔵人の世話になるつもりなどない』


 だけど、お嬢様が人質にされてる以上……奴の屋敷には戻らざるをえない。



 何か奴の弱点を探して出して、有効な取引ができれば理想だ。

 蔵人が服従するような何かがあるといいのだが……



 アリシアを羽交い締めにしながら、ゆっくりと扉へと移動する。

 護衛は、悔しそうな顔をして銃を床に置く。


 可能な限り、蔵人の頭に銃口を向けながら慎重に扉の外に出た。

 バーテンも給仕の女たちも、震えながら身を寄り添わせていた。


 握り締めた鉛の塊。
 自分でも気付かぬうちに、手に汗をかいている。滑らないよう確りと握り締めた。




< 90 / 509 >

この作品をシェア

pagetop