一番星の愛情物語
どこかの令嬢の声で、係りの者がかけつけました。


「ケーキが勿体ないじゃない!末代までたたってやる!」


詰め寄せた令嬢達は、蜘蛛の子を散らすように離れて行きました。


「お嬢様、大丈夫ですか?」


「当たり前でしょ?その方、休ませてあげて。……ケーキ、テイクアウトさせてもらうから」


その言葉に、嗣実さまは、吹き出してしまいました。


「何かおかしい?たくさんあるし、誰も手をつけてないなら、捨てるんでしょう?だったら、少しくらいもらってもいいじゃない」


嗣実さまは、力なく笑いました。


「勿論です。お好きなだけお持ち帰り下さい。それと、わたしは壱星嗣実と申します。お名前を伺ってもよろしいですか?」


令嬢は瞬きをして、軽く息を吐く。


「佰宮いろは(はくみいろは)。姉の代わりですから。わたし、高校生ですし」


嗣実さまは、ニッコリと笑う。


「年齢は問題ありません。妹は十六で嫁ぎました。父は十八で結婚をしました」


いろはさまは、瞬きをした。


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