解ける螺旋
それに気付いて、私はねえ、と健太郎に顔を向けた。


「健太郎は知らない?
樫本先生がこれまでにどんな研究をしていて、どんな論文を発表してたか。
……探したんだけど、どこにもなくて」

「……樫本先生?」


健太郎の明らかに不機嫌な表情に、私は思わず口を噤んだ。


そうだった。
健太郎も私と同じ様に、暗示めいた言葉を掛けられていたんだ。
あの時の先生も、私に見せたのと同じ冷酷な態度で。
そしてやっぱり傷付いた様な瞳で健太郎を見ていた。
まるで憎む事を強いられているみたいに。
だから健太郎が警戒した様な表情を浮かべるのも無理はない。


「……奈月。樫本先生と何かあったの?
これまでずっと研究サボってたのって、アイツのせい?」

「……あの、健太郎」


矢継ぎ早に尋ねて来る健太郎を必死に制した。
私の声に健太郎はハッとした様に瞳を震わせて、そして私から視線を逸らした。


「……ごめん。答えたくなければ答えなくていい。
俺が聞き出す事じゃないから」


そう言った健太郎の声が堅い。
私は何だか気になって、もう一度健太郎の前に立ちはだかった。


「どうしたの? ……健太郎、何かあった?」
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