解ける螺旋
この間二人の間に起きたやり取りだけじゃない。
きっと健太郎自身の中で、樫本先生に対して疑惑を強めるような出来事があったんだ。
健太郎の微妙な態度が、私にそう告げている。


「ねえ、健太郎」

「……おかしいと思わないか。樫本先生」

「え?」


憚る様に小さく呟かれた言葉。
だけどその芯はしっかりしていて、一瞬私の方がビクッと震えた。


「俺達が知らない俺達を知ってる。
……上手く言えないけど、そう思うんだ」

「ど、どういう事?」


健太郎の謎々みたいな言葉に混乱し掛ける。
私の言葉に健太郎が口を開き掛けた時、研究室のドアが開いた。


「おや、相沢さん。久しぶりですね。
身体は大丈夫なんですか?」


ニコニコと穏やかな笑みを浮かべた教授が入って来る。
それを見て健太郎はキュッと口を噤んだ。


「は、はい……。すみません。ご心配をお掛けしました」


体調不良って事になっていたなら、そのまま誤魔化した方がいい。
私は慌てて頭を下げた。
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