解ける螺旋
「学会も近いのに、健太郎に任せてばかりになっちゃって」

「ふふふ。大丈夫ですよ。
結城君がしっかり続けていましたし、樫本先生もフォローしてくれてますからね。
ああ、樫本先生も心配してましたよ、あなたの事。
残念ながら今日は学会で出張しています。
今日は遅くなるでしょうから、研究室には来ないと思いますが。
明日は来るでしょうから、元気な姿を見せてあげたら安心すると思いますよ」


笑みを崩さずに自分のデスクに向かって行く教授に、私は黙ったままもう一度頭を下げた。
それを確認した健太郎が、私の白衣を軽く引っ張る。


「……こっち。場所変えてちょっと話そう」


振り返ると、健太郎はもう私に背を向けてドアに向かって歩いている。
それを見て、私は慌てて後を追った。


健太郎に何があったかはともかく、多分健太郎も私と同じ不審な思いを樫本先生に抱いている。
それが私と完全に共通するとは思わないけれど、私が知りたい事には繋がるかもしれない。


私が健太郎に話せる事は少ないけれど。
もし健太郎が何か知ってるなら、一人で悩むよりずっと、先生の心に近付ける気がした。
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