解ける螺旋
「……私、先生に話が……」


何か言わないとそのまま行ってしまいそうだったから、私は必死に口実を考える。
先生は眉をひそめてから、身体の向きを変えてようやく私に向き合ってくれた。


「話なら研究室で聞く。今日は疲れてるんだ。
もう遅いから、気を付けて帰って」

「……先生?」


妙な余所余所しさに心がざわめく。
あんな事があった後だけど、先生のこんな態度は想像もしなかった。


気まずい、というのとは違う。
今までの掴めない態度とも違う。
心を隠した優しい先生とも違う。


そう、多分、そこにあるのは拒絶だった。
それがわかるから、よくわからない焦りが湧き上がる。


「待って下さい。……なんで先生が避けるんですか」

「……なんでって」


真っ直ぐ見つめると、先生はフッと視線を逸らした。


やっぱりおかしい。
先生が私から目を逸らす意味がわからない。


「普通に考えても『また明日』で間違ってないと思うけど。
こんな時間に男の所に来るなんて感心しないよ」

「先生らしくないですよ、そんな言葉」

「らしくない、って。……君、煽ってるの?」

「……」


樫本先生が意地悪に笑った。
だけどそんな言葉すら、私を拒否する為に選んで言ってる様にしか聞こえない。
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