解ける螺旋
だから私は大きく息を吐いて、緊張をどうにか鎮めようとした。


「話を聞いてもらえるなら、そうとってもらってもいいです。
……なんなら言い訳出来なくなる様に、本当に煽りましょうか」

「え?」


私の言葉に、先生の瞳が揺れた。
それを見つめたまま、私は先生の手をとって自分の胸に触れさせた。
一瞬だけ先生の手がピクッと震えて、その感覚が私にも伝わって来る。
途端に物凄く大胆な事をしているって自覚して、急に頬が熱くなった。


だけど今更引けない。
自分の行動に引っ込みがつかなくなって、どうしていいかわからなくなって来た時、樫本先生が苦笑した。


「……すごい緊張してるくせに、いい度胸だね。
まあいいや。そこまで覚悟があるなら入って。
一応言っておくけど、俺の部屋だし。
俺が何しても、同意の上って逃げ方出来るのは覚えておいて」


そう言うと先生は私の手を自分の手からそっと外した。
胸に感じていた先生の手の感触が消えて、私は内心でホッとする。
それに気付いたのか、先生は私に背を向ける前に小さく笑った。


鍵を開けてエントランスを抜けて行く先生の背中を追いながら。
私は今のこのドキドキも、本当は『私』のものじゃないのか、と疑ってとても苦しくなった。
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