解ける螺旋
「昨日話してから考えたんだ。
俺も奈月も、どうやらあの誘拐事件前は先生と出会ってない。
だから全ての始まりは、きっとあの誘拐事件なんだと思った。
奈月、思い出して。
あの事件の後、何が変わったと思う?」

「何って……」


突然言われても。
私には誘拐事件の記憶はあっても、そのせいで変わった何かなんてわからない。
ただ首を傾げると、健太郎はふふっと笑う。


「例えばね。
もし、あの誘拐事件が起きなかったら。
それから、これは嫌な思いさせるけど、奈月が救出されなかったら。
大きく分ければ、他に考えられる可能性はこの二つ。
今の俺達は奈月が誘拐されて救出された後の世界を辿ってるけど、そうじゃない世界だったら、俺達の周りがどう変わると思う?」


よほど考えたんだろう。
健太郎はもう既に答えを知っていて、私に理解させる為に答えさせようとしてるのがわかる。


「え? ……難しいな。えっと……。
誘拐されなかった場合? 何も変わらないんじゃない?
きっとあのまま普通に過ごして大人になって」


一生懸命考えて、だけど健太郎が首を振る。


「覚えてる? 奈月は俺の身代わりで誘拐されたんだよ。
……身代金目的。
みんなはっきりとは言わなかったけど、状況を考えるだけでそんなのわかる。
だから奈月が誘拐されなかったら、その後はきっと俺が誘拐された。
で、これは俺の推測なんだけど、身代金の要求に親父は答えない。
直ぐ警察に通報して対策練ってた位だし、脅しに屈せずに俺を切り捨てるんじゃないかな。
結構そういうとこ厳しいし。
……で、高確率で俺は殺される」

「そ、そんな!」


自分が殺されるなんてあっさり言う健太郎に、つい声を上げた。
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