解ける螺旋
世間では結構騒がれた。
私と健太郎が通っていた小学校の周りでは、通り魔が出るとか変質者を目撃したとか不穏な噂が相次いで、しばらくの間は集団下校の措置がとられた。


私を心配した両親と健太郎の両親の申し出があって、私は一年近く登下校を健太郎の家の車で送迎してもらった。
必然的にいつも健太郎と一緒になって。
そしてそれからも、送迎が無くても結局いつも健太郎と一緒にいる事が増えた。


「……まあ、それもあるけど。
変わったのはそれだけじゃない。
他には? 奈月の周りで変わった事」

「と、言われても……。何と比べて変わった事、なのか。
……あ。私の両親が、健太郎のとこの研究所に勤め始めたよね。
それまでも研究熱心だったけど、なんか輪を掛けて。
そう言えば、お母さんは約束だって言ってたけど。……あ!」


まるで健太郎に引き出された様な言葉に、自分で反応した。
それが正しいと言う様に、健太郎は腕組みをして軽く頷いてみせた。


「約束ってこの事?
研究を進めて、健太郎のとこの研究所で薬を開発しろって?」

「そんな約束があったんだってな。
俺はうちで働き出した理由を確認に行ったんだけど、おばさんが教えてくれた」

「お母さんが?」

「あの誘拐事件の時。
奈月を無事に救出する見返りに、研究を続けて製品化しろって一方的な要求があったんだって。
冗談だと思ったらしいけど、実際にお前が戻って来て、おばさん達は成果を上げなきゃいけなかった。
だけど何の研究で何の薬を開発するのかって指示はなかったみたいだよ。
この間の薬で約束を果たせたのかわからないって。
だからまだ安心出来ない。……だけど」


健太郎は言葉を切ると、背後に遠くなっていく校舎を軽く振り返った。
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