解ける螺旋
健太郎は少し険しい目を私に向けた。
真っ直ぐ見つめられて、私の方が視線を微妙に逸らす。


「……先生は結局、奈月の事をどう思ってるか答えなかった」


抑揺のない声でそう言われて、ズキッと胸の奥が痛んだ。


わかってる。
愁夜さんは私を好きな訳じゃない。
もしも健太郎が言ってる事が正しいんだとしたら、私の両親が薬を開発する未来を導く為に、私が生きる世界が必要だっただけ。
しかも薬が製品化された今、逆に私がもう必要がなくなったんだとしたら。


今私の前に現れたのは、また別の目的がある。
それはきっと……。


「……先生が私に近付いたのは、私を殺す為?」


目を伏せて、声が震えない様にするだけで必死だった。
健太郎はそれには答えずに、私に背を向けて歩き出してしまう。


「……今日行くって連絡は昨夜のうちにしておいた。
だけどあんまり遅くなると迷惑だから、急いで」


それだけ言って離れて行く健太郎と距離を縮める事もせず、私もようやくノロノロと歩き出した。


――私は愁夜さんに殺されるの?


私を助けてここまで生かして、どうして今は必要無くなってしまったの?
他の世界の私を何度も殺して来た人かもしれない。
だからこそ今じゃなきゃいけない理由があるはず。


だけどそれならどうして、出逢う前に殺してくれなかったのか。
私は傷付いた心を必死に庇って、何とか健太郎の後を追った。
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