解ける螺旋



健太郎が向かった先は、結城財閥が経営している病院だった。
すっかり日の落ちた冬の早い夜。
時間外の出入り口から院内に入ると、健太郎は迷う様子もなく病棟のエレベーターに乗り込む。
ドアが閉まって二人になると、健太郎はボソッと呟いた。


「樫本先生の目的があの薬の開発、製品化だとしたら、今の世界で恩恵を受けてるって事になる。
だからちょっと考えてみたら予想は出来た。
樫本先生の妹はあの薬の治験者なんだ。
第一次募集で応募して、この病院で治療を受けた。
あの病気は先天性だから患者は大人になる前に手術を何度も受けて、それが上手くいかないと、大人になる前に亡くなる事が多いんだって。
だけど彼女には、結果的に治験で効果が表れた。
完治した訳じゃないし治療は続くけど、今この世界で彼女は生きてる。
……樫本先生の妹、西谷真美さんの場合は」


スッと開いたエレベーターのドアから、健太郎は廊下に足を踏み出す。
その背中を眺めながら、健太郎の言葉に、え? と声を上げた。


どこかで聞いた様な。
思い出そうとする私を、健太郎は振り返って見ている。


「西谷? 西谷真美さんって……」

「覚えてない?
新薬開発パーティーに招待されてた治験者。
奈月も俺と一緒に会っただろ」

「……あ!」


自分の記憶を辿って行くうちに、健太郎の言葉が結び付いた。


「あの時の!? ……でもまさか。すごい偶然」


無意識に呟いた言葉に、健太郎はコートのポケットに手を突っ込みながら、偶然ね、と繰り返した。
< 178 / 301 >

この作品をシェア

pagetop