解ける螺旋
パーティーの席で出会った西谷さんを思い出す。
華やかなパーティーの場、健太郎に挨拶しただけで泣きそうになるほど緊張していた儚げな可愛い女の子。


健太郎に話し掛けられて真っ赤になってた彼女に女の勘が働いて、私は気を利かせて健太郎に任せるなんて行動を取った。


――結構お似合いだった様な気がするんだけど。


私がそんな事を考えているとも知らず、健太郎は先を歩く。


「偶然かねえ。……俺はむしろ仕組まれたんじゃないかと思うけど。
ああ、奈月。ここだよ」


時折通り過ぎる白衣姿の医師が、この病院の経営者の息子の健太郎に会釈をする。
病室を探しながら軽く挨拶を返す健太郎を眺めて、立ち止まった病室の名札を目にした。


『西谷真美様』


二人部屋を一人で使っているらしい。もう一つの名札に名前はなかった。


ちょうど夕食時なのか、大きな配膳車が廊下の端に横付けされている。
各病室からは食器の音がして、笑い声も聞こえて来る。
パジャマ姿の患者さんがお膳を戻しに出て来る以外、廊下に人通りは少なかった。


この部屋の中に、パーティーで出会った西谷さんがいる。
会うのが二度目の彼女が入院しているんだと思うと、それだけでなんとなく緊張した。
だけど健太郎は躊躇う様子もなく、ドアを軽くノックする。
直ぐに中から声がして、健太郎はドアを開けた。


「こんばんは、西谷さん。突然お邪魔してすみません。
久しぶりだけど、覚えてるかな」


健太郎の声に、窓の外を見ていた彼女がゆっくりと顔を向けた。
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