解ける螺旋
「ついさっき、君は俺のマンションから出て行ったんだけど」

「ついさっきって……。
あれから愁夜さんは二週間近く行方不明だったんですよ!?
下手したら教授が捜索願出すとこだったのに」

「それは困るな。
捜されても見つからないだろうし」


当たり前の様に笑われて、愁夜さんが自分の世界に戻っていた事を察した。


きっとあの後、私が真実を知った後の未来がどう変わるのかを確認して、愁夜さんはまたここに戻って来たんだ。
二週間前の時間軸に戻らなかったのは、もしかしたらって予感があったのかもしれない。


愁夜さんが今の西谷さんの状況をどれ位知ってるのかわからないけど。
愁夜さんにとって、この世界は期待出来る物だったのかもしれない。


だけど。
それでも今、私の前に姿を現したのは、つまり。


「やっぱり、私を殺しに来たんですか?」


下から愁夜さんを見上げた。
愁夜さんは黙って私を見つめている。


「この世界の未来でも、西谷さんは生きていられなかったの?」


返事は戻って来ない。
このまま先に進めば、真美さんの恋は成就しそうに思えたのに。
それでもダメなら、他にどうすればいいんだろう。


何も出来ずにいれば、愁夜さんはまた他の世界の私の所に行ってしまう。
それも『私』なんだとわかっているのに、とても苦しい。
混乱する位切ない。


だから私は唇を噛んで、愁夜さんの上着の裾をギュッと握り締めた。
そして掠れる声で必死に呟いた。


「……いいよ。愁夜さんになら、殺されても」
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