解ける螺旋
え? と、戸惑った息遣いが聞こえた。
だからもう一度、しっかりと目を見つめて繰り返す。


「愁夜さんになら、殺されてもいい」

「……何? やっぱりおかしくなっちゃった?」


小馬鹿にした様な声も、どことなく緊張を孕んで聞こえる。


「おかしいのかな、やっぱり」

「おかしいね。
少なくとも、俺が君だったら自分が殺されてもいいなんて言う前に、俺を殺す事を考えると思うよ。
君の記憶じゃなくても、散々酷い事されたって知ってるんだし。
それに……。今の君は俺を憎んでもいいくらいだから。
この世界で俺に何をされたか、冷静に思い返してみればいい」

「……」


そうなんだろうな、って思う。
だけど私には愁夜さんを殺すなんて出来ないし、そもそもそんな事をしたいとも思わない。


「そっか。じゃあおかしくてもいいです」

「……奈月?」


愁夜さんは私の本気を感じたのか、不審そうに眉をひそめた。


「あのさ。まさかと思うけど、マジで俺に惚れちゃった訳じゃないよね?
それなら勘違いだって証明してあげるよ。
あんな形でも、一度身体を許した男に女は弱いって言うし。
……ただ情が移っただけだよ」


そうかもしれないな、って思う。
ちょっと前までは、俺の事が好きなんだ、なんて強気な事を言ってたのに。
今は真逆の事を言い聞かせる愁夜さんがおかしい。
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