解ける螺旋
兄妹揃って、あの二人には救われてばかりだ。
財閥を継ぐ息子として背に負った物がありながら、真美を選んでくれた結城なら、俺が望む以上の未来を真美に与えてやれる。
いや、一緒に幸せを求めて歩ける。


俺の様に、時空の座標を探し出さなくても。
自分の持つ力だけで。
その包み込む様な深い愛情で、周りの人間をも幸せに出来る。


俺は今、同級生の結城を見て、それだけは心から尊敬してるし、自分もそう在りたいと思う。
たった一人の妹の幸せしか願って来れなかった俺には、それだけの器はないけれど。


せめてたった一人。


結城を見習って、奈月だけは俺が幸せにしたいと思う。
そしてそれが連鎖して、誰かの幸せに繋がるのなら。


真美が結城に連れられて黒塗りの車に乗り込む。
車が走り出してもその姿を見送りながら、俺は妙に青く見える空を見上げてた。


俺ももう帰って、夜に備えて眠っておかないと。
奈月を幸せにする為に。
俺の望んだ未来を創り上げてくれた、相沢夫妻に初めて対面する為に。
彼女をもらう許可を得る為に。


今夜は人生最大の一大イベントだ。
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