おおかみとちいさなうさぎ
コンコンコン
「おおかみさん、うさぎだよ」
おおかみの巣のドアをノックし、声をかけたが、おおかみからの返事はなかった。
コンコンコン
「おおかみさん、お留守なの?木の実を持ってきたの。」
やはりおおかみからの返事はない。
「おかしいなぁ。寒いのが苦手なおおかみさんがこんな寒いなか、外に出かけるとは思えないし…」
ふわりとうさぎの目の前を何か白いものが落ちてきた。
「あ…」
雪だった。
森中が一段と寒くなった。
「おおかみさん、お留守みたいだし、ぼくも巣に帰ろう。」
そうしてうさぎがおおかみの巣に背を向けて帰ろうとしたその時
「………寒いよ…」
おおかみの巣の中からかすかな声が聞こえた。
「おおかみさん?」
うさぎはそっとおおかみの巣のドアに手をかけた。
鍵はかかっておらず、ドアはすぐに開いた。
「おおかみさん!?」
巣の中を覗いたうさぎが驚いて大声をあげた。
そこではおおかみが倒れていた。
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