主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
「ぬ、主さまは寝なくて大丈夫なの?」
牛車の中で腕組みをして瞳を閉じている主さまに怖ず怖ずと声をかけた息吹はなるべく意識しないように努めてそう声をかけたのに、主さまがどこか強張った表情をしていたので、何故か肩を揺らして笑いを堪えている晴明の膝に触れた。
「主さま…怒ってるのかな?」
「まあ…主さまにも色々あるのだ」
ぎらっと主さまに睨まれたが一向にひるんだ様子もなく晴明の屋敷に着いた。
竹林の広がる裏庭に踏み入ると生い茂っていた雑草が導くように左右に分かれて、息吹は目を丸くしながらも晴明に手を引かれて歩き出した。
そして開けた場所に出ると、新しい盛り土の墓が作られていて、そこで膝を折って手を合わせた。
「父様の母様…お帰りなさい。あんな暗い所にずっと居て苦しかったでしょう?これからは父様のお話を沢山してあげますね」
「違うよ息吹。私がそなたの話を母上に沢山してやるのだ。十六夜、手を合わせてやってくれ。…母上はそなたを恨んでなどいなかったぞ。…多分な」
――最後は茶目っ気たっぷりにそう言ってはぐらかしたが、
自分の助けを待ちながら命を奪われた葛の葉は…さぞ無念だっただろう。
幼い晴明を残し、どれほど悲しかっただろうか。
「葛の葉…すまなかったな。俺の力が足りず、お前と晴明を引き離してしまった」
振り絞るような声で唇を震わせた主さま――
息吹は居たたまれない気持ちになって、主さまの腕にぎゅっと抱き着いた。
「主さま…父様の母様は許して下さいます。こうして助けに来てくれたんだから」
「…助けたのはお前だ。二度と勝手なことはするな。晴明、よく見張っておけ」
「おや、息吹を見張るのはそなたの努めだろう?私はしばらく羽を伸ばすと言ったはずだぞ」
「父様、寂しいから時々会いに来てください。ちゃんとご飯を食べてないか心配だし…」
「ふふ、まるで私の妻のような口ぶりだな。…ん?私の顔に何かついているか?」
“妻”という言葉に過敏に反応した主さまが眉を上げて睨むと、息吹が晴明の視線を追ってこちらを見たが背を向けて元来た道を戻り始めた。
「帰るぞ息吹」
一緒に――
牛車の中で腕組みをして瞳を閉じている主さまに怖ず怖ずと声をかけた息吹はなるべく意識しないように努めてそう声をかけたのに、主さまがどこか強張った表情をしていたので、何故か肩を揺らして笑いを堪えている晴明の膝に触れた。
「主さま…怒ってるのかな?」
「まあ…主さまにも色々あるのだ」
ぎらっと主さまに睨まれたが一向にひるんだ様子もなく晴明の屋敷に着いた。
竹林の広がる裏庭に踏み入ると生い茂っていた雑草が導くように左右に分かれて、息吹は目を丸くしながらも晴明に手を引かれて歩き出した。
そして開けた場所に出ると、新しい盛り土の墓が作られていて、そこで膝を折って手を合わせた。
「父様の母様…お帰りなさい。あんな暗い所にずっと居て苦しかったでしょう?これからは父様のお話を沢山してあげますね」
「違うよ息吹。私がそなたの話を母上に沢山してやるのだ。十六夜、手を合わせてやってくれ。…母上はそなたを恨んでなどいなかったぞ。…多分な」
――最後は茶目っ気たっぷりにそう言ってはぐらかしたが、
自分の助けを待ちながら命を奪われた葛の葉は…さぞ無念だっただろう。
幼い晴明を残し、どれほど悲しかっただろうか。
「葛の葉…すまなかったな。俺の力が足りず、お前と晴明を引き離してしまった」
振り絞るような声で唇を震わせた主さま――
息吹は居たたまれない気持ちになって、主さまの腕にぎゅっと抱き着いた。
「主さま…父様の母様は許して下さいます。こうして助けに来てくれたんだから」
「…助けたのはお前だ。二度と勝手なことはするな。晴明、よく見張っておけ」
「おや、息吹を見張るのはそなたの努めだろう?私はしばらく羽を伸ばすと言ったはずだぞ」
「父様、寂しいから時々会いに来てください。ちゃんとご飯を食べてないか心配だし…」
「ふふ、まるで私の妻のような口ぶりだな。…ん?私の顔に何かついているか?」
“妻”という言葉に過敏に反応した主さまが眉を上げて睨むと、息吹が晴明の視線を追ってこちらを見たが背を向けて元来た道を戻り始めた。
「帰るぞ息吹」
一緒に――