主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
その頃銀は葛の葉の墓前に居た。
人と夫婦になり、命を奪われ、子を残して逝った妹…
その妹をあの憎き宮廷から救い出したのは、息吹だという――
「…本当に変わった子だな、あんなに弱そうなのに。晴明が甘やかし、可愛がるわけだ」
息吹に見せてやろうと思っていたものを手に握りこみ、腰を上げるとぶらぶらと竹林を歩き、庭に着くと、晴明の膝枕ですやすやと眠っている息吹を見つけた。
「親子水入らず…と言いたいところだが、夫婦に見えるのは気のせいか?」
「気のせいだ。今眠ったところ故、大声を出すな。起きてしまう」
そう言いながら盃を呷った晴明の隣で腰を下ろすと、銀は息吹の寝顔を覗き込み、あどけない表情ですうすうと寝息を立てている息吹に笑みを浮かべた。
「こうしているとまだ幼子のようだな」
「まだ幼子だ。まだ嫁にはやらぬ」
「十六夜の元へか。俺はあいつがあんなに振り回されている姿を見たのははじめてだぞ。だから、本気なのだとわかった」
「本気過ぎて、いつ息吹を襲うかと冷や冷やしている。毎日釘を打たねば何をするかわからぬ」
「ふふっ、お前…真の親っぽいぞ。ん?」
晴明を茶化そうとした時、尻尾にさわさわと触れる手の感触。
「銀さんだ…」
「起きたかこの助平」
「!し、尻尾触ってるだけ…」
「それが助平だと言っているんだが。まあいい、好きなだけ触れ」
ふわふわでふかふかの真っ白な尻尾の感触がたまらないらしく、膝枕をしてもらいながら笑顔で尻尾を触りまくる息吹の隣にごろんと寝転がると頬杖をつき、頭を下げた。
「耳も触るか?」
「うん!ねえ、父様には耳と尻尾はないの?もしあったら最高なのに」
「見たいか?実は術で隠してあるだけなのだよ」
「え!本当に!?」
がばっと起き上がった息吹の胸元が乱れ、危うく胸の谷間が見えそうになると銀が口笛を吹き、晴明が息吹の身体に素早く羽織をかけてそれを隠した。
その間に息吹は手を伸ばして晴明の耳に触れ、首を傾けて背中側を見ると、さすがに尻には触れなかった。
「ん?尻尾は確かめなくていいのか?」
意地悪晴明再び。
人と夫婦になり、命を奪われ、子を残して逝った妹…
その妹をあの憎き宮廷から救い出したのは、息吹だという――
「…本当に変わった子だな、あんなに弱そうなのに。晴明が甘やかし、可愛がるわけだ」
息吹に見せてやろうと思っていたものを手に握りこみ、腰を上げるとぶらぶらと竹林を歩き、庭に着くと、晴明の膝枕ですやすやと眠っている息吹を見つけた。
「親子水入らず…と言いたいところだが、夫婦に見えるのは気のせいか?」
「気のせいだ。今眠ったところ故、大声を出すな。起きてしまう」
そう言いながら盃を呷った晴明の隣で腰を下ろすと、銀は息吹の寝顔を覗き込み、あどけない表情ですうすうと寝息を立てている息吹に笑みを浮かべた。
「こうしているとまだ幼子のようだな」
「まだ幼子だ。まだ嫁にはやらぬ」
「十六夜の元へか。俺はあいつがあんなに振り回されている姿を見たのははじめてだぞ。だから、本気なのだとわかった」
「本気過ぎて、いつ息吹を襲うかと冷や冷やしている。毎日釘を打たねば何をするかわからぬ」
「ふふっ、お前…真の親っぽいぞ。ん?」
晴明を茶化そうとした時、尻尾にさわさわと触れる手の感触。
「銀さんだ…」
「起きたかこの助平」
「!し、尻尾触ってるだけ…」
「それが助平だと言っているんだが。まあいい、好きなだけ触れ」
ふわふわでふかふかの真っ白な尻尾の感触がたまらないらしく、膝枕をしてもらいながら笑顔で尻尾を触りまくる息吹の隣にごろんと寝転がると頬杖をつき、頭を下げた。
「耳も触るか?」
「うん!ねえ、父様には耳と尻尾はないの?もしあったら最高なのに」
「見たいか?実は術で隠してあるだけなのだよ」
「え!本当に!?」
がばっと起き上がった息吹の胸元が乱れ、危うく胸の谷間が見えそうになると銀が口笛を吹き、晴明が息吹の身体に素早く羽織をかけてそれを隠した。
その間に息吹は手を伸ばして晴明の耳に触れ、首を傾けて背中側を見ると、さすがに尻には触れなかった。
「ん?尻尾は確かめなくていいのか?」
意地悪晴明再び。