主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
息吹の体調が完全に回復するまで、主さまは百鬼夜行以外は常に息吹の傍に居た。
そしてあの戦いから1週間後――息吹はようやく主さまの部屋から出ることを許されて、脚が萎えてふらつくのを主さまに支えてもらいながら縁側に出て久々の日差しを浴びた。
「わあ…なんか眩しい…」
「息吹っ!良くなったにゃ?」
「!猫ちゃん!」
ずっと毎日毎晩庭で息吹を待ち続けていた猫又が何本もある尻尾を振り回しながら腰を浮かすと、息吹はすぐ庭に降りて寝転がって腹を見せた猫又を撫で回しながら傷口を探した。
「ごめんね、私があんなひどいこと…」
「息吹じゃなかったにゃ。瞳の色もぴかって光ってて全然息吹じゃなかったにゃ」
「うん…。でも猫ちゃん、ごめんね。……あれ?」
がさがさと庭の木が揺れたと思ったら、そこかしこから百鬼たちが飛び出して来て、煙管を噛んで縁側から見守っていた主さまをも驚かせた。
「…お前たち…何をやっている」
「そろそろ息吹が起きてくるんじゃないかと思って毎日見張ってたんだ。おかげで俺たちゃみんな寝不足さ」
わはははと笑い声が木霊して、特に動物系の妖はこぞって息吹に群がるとすり寄ったり触ってもらったりして息吹の顔は全開の笑顔に。
「みんなありがとう。みんなが私に声をかけてくれたの聴こえてたよ。すっごく嬉しかった」
「当然さ。お前たちは俺たちの姫で、これからもずっと面白楽しく一緒に生きていくんだ。そうだろ?」
「うん!」
わいわい騒いでいる百鬼たちの中に晴明の姿がないことに気が付いた主さまは、目尻に涙を浮かべて一緒に喜んでいる山姫に声をかけた。
「晴明はどこに居る?」
「探し物があるとかで平安町の屋敷に戻ってると思いますよ。…ってなんであたしに聴くんですか」
「いや、別に」
頬が赤くなった山姫をもっといじってやりたかったが、晴明の探し物というのは恐らく…木花咲耶姫を封印した者の正体だろう。
息吹は別にそれを知らなくてもいいと思っているし、知るのは自分と晴明だけでいい。
全てのことは晴明に任せて息吹の傍に居ると決めた主さまは、あの荒れ狂う炎の中で息吹と約束した言葉を思い浮かべた。
“1年なんか待っていられない。戦いが終わったらお前を妻にする”と約束したこと…息吹は覚えているだろうか?
そしてあの戦いから1週間後――息吹はようやく主さまの部屋から出ることを許されて、脚が萎えてふらつくのを主さまに支えてもらいながら縁側に出て久々の日差しを浴びた。
「わあ…なんか眩しい…」
「息吹っ!良くなったにゃ?」
「!猫ちゃん!」
ずっと毎日毎晩庭で息吹を待ち続けていた猫又が何本もある尻尾を振り回しながら腰を浮かすと、息吹はすぐ庭に降りて寝転がって腹を見せた猫又を撫で回しながら傷口を探した。
「ごめんね、私があんなひどいこと…」
「息吹じゃなかったにゃ。瞳の色もぴかって光ってて全然息吹じゃなかったにゃ」
「うん…。でも猫ちゃん、ごめんね。……あれ?」
がさがさと庭の木が揺れたと思ったら、そこかしこから百鬼たちが飛び出して来て、煙管を噛んで縁側から見守っていた主さまをも驚かせた。
「…お前たち…何をやっている」
「そろそろ息吹が起きてくるんじゃないかと思って毎日見張ってたんだ。おかげで俺たちゃみんな寝不足さ」
わはははと笑い声が木霊して、特に動物系の妖はこぞって息吹に群がるとすり寄ったり触ってもらったりして息吹の顔は全開の笑顔に。
「みんなありがとう。みんなが私に声をかけてくれたの聴こえてたよ。すっごく嬉しかった」
「当然さ。お前たちは俺たちの姫で、これからもずっと面白楽しく一緒に生きていくんだ。そうだろ?」
「うん!」
わいわい騒いでいる百鬼たちの中に晴明の姿がないことに気が付いた主さまは、目尻に涙を浮かべて一緒に喜んでいる山姫に声をかけた。
「晴明はどこに居る?」
「探し物があるとかで平安町の屋敷に戻ってると思いますよ。…ってなんであたしに聴くんですか」
「いや、別に」
頬が赤くなった山姫をもっといじってやりたかったが、晴明の探し物というのは恐らく…木花咲耶姫を封印した者の正体だろう。
息吹は別にそれを知らなくてもいいと思っているし、知るのは自分と晴明だけでいい。
全てのことは晴明に任せて息吹の傍に居ると決めた主さまは、あの荒れ狂う炎の中で息吹と約束した言葉を思い浮かべた。
“1年なんか待っていられない。戦いが終わったらお前を妻にする”と約束したこと…息吹は覚えているだろうか?