絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅰ 
 端の方に置かれていたピンクのドンペリがどうしても気になる。
「だってさあ、ホストイコールドンペリ」
「10万とかするからね」
「10万!? すごいなあ……これで、シャンパンタワーとかしたいですよね」
「え? 家でタワーやんの?」
「……誰が片付けするの?」
「その前に用意ができひんよ(笑)。あんなタワーにするならええグラスでないと」
「家にある物を適当に並べてもね……」
「ただの皿からはみ出した酒やん(笑)」
「ひどいー(笑)、気分はホストのシャンパンタワーなのにー(笑)。あっ、では今夜はユーリさんご指名でお願いしまーす」
「いらっしゃいませーってか?(笑)」
「ユーリでーす(笑)。お触り1回ならオーケイでーす」
「店変わっとるし(笑)」
 そんな相談の後、ユーリチョイスの物を1本追加して合計2本を持って、5000円弱。もちろん箱は全部ユーリがレジまで持って行ってくれたのだが、レジを通すなり、財布を出し始めるので、
「え!?」
「ええよ。払っといてあげる」
「えー!?」
 言いながら、ユーリの10000円は既にレジスターの中へ。
「……そんなつもりじゃ……」
 店内を出ながらとりあえず先に謝った。
「ええよ。俺も一緒に飲むし」
「でも、悪いなぁ……」
「女の子に出させるわけにはいかんでしょ」
「それは……彼女の時だけでいいんじゃないですかね」
「いいよ、4700円くらい」
「まあ……ユーリさん、稼いでますしね」
 わりと家にいますけど。
「それにしてもはよ飲みたいなー」
「車どこです?」
「あそこ。見えてるやん」
「あぁ、覚えてなくて……」
「まあ、俺もレイほど車に興味ないけど」
 ユーリの車は白の乗用車だ。普通の、それほど改造していない車だと思う。メーカーは何か、そこまで知らない。
「ご飯なに作ろうかなあ? どっかで買います?」
「ええよ。作るし」
「けど時間かかるじゃないですか。なんか、あんな和紙で包まれてたら、早く剥ぎたくなりません?」
「おおー、和服を脱がす時と、感覚と似てるな」
「……そうなんですかねえ……」
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