優しい手①~戦国:石田三成~【完】
乳白色の湯の下では、壮絶なバトルが繰り広げられていた。


意外と純情な面のある政宗は、桃の右隣で、湯の下で指を絡ませていて、謙信はあたかも“何もしてない”という態で左隣で腰を撫でている


「や、やめ…っ」


「え、何が?政宗公、湯の下で何か悪さをしているのは君でしょ?」


「あ?俺は何もしていないぞ。貴公こそ何をしている!」


「私?私は何もしてないよ。ね、姫」


「え、あの…何も、して、ないよ…っ」


途切れ途切れになってしまうのは、謙信の手が動いているから。

いくらバスタオル越しとはいえ、その手つきはダイレクトに伝わってくる。


ぎゅっと目を閉じて何かに耐えているような顔をしている桃の顔を政宗が覗き込もうとした時――


すぐ近くの藪から異音がして、政宗が雄々しく立ち上がる。


「何事だ、どうした!黒脛巾組、何をしている!!」


腰巻だけの格好で音がした藪の方へと荒々しく向かっていく政宗を桃と謙信が見つめ、そして…


「やっと二人気きりになれたね、姫」


「謙信さん、あんなこと、していいの…!?」


異音の正体は、謙信が藪に向かって投げた小さな小石。


「いいんじゃない?でも騙していられるのは少しの間だけだよ。姫…」


桃の肩を強引な強さで抑えつけて、下唇をぺろりと一度舐めた。


「そろそろ三成たちもやって来る。また皆に秘密が増えちゃったね、私と姫だけの秘密だよ」


やわらかい目元はそのままに、これもまた少し強引に舌が絡まってきて、音を立てて桃を惑わせて、意識を奪う。


「くそっ、何も居なかったぞ。…?桃姫、どうした?」


政宗が戻ってきた時、桃は膝を抱えてうずくまり、鼻の辺りまで湯に浸かっていた。

見るからに顔は赤かったが、横の謙信は何食わぬ顔で桃の肩を抱いている。


「おい、俺の桃姫に気安く触るな。俺が奥州に戻ったら各大名に言いふらしてやるからな。“上杉謙信は清純などではない”とな」


「私だって男だもん。女子に触れたい時だってあるよ」


その切り返しに鼻を鳴らしながら桃の隣に戻り、謙信の手を払った。
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