優しい手①~戦国:石田三成~【完】
浴衣を着ると清野の様子が気になって、1階の清野の部屋へと向かった。


中からは何ら音がしないのでそっと戸を開けてみると、暗い部屋の真ん中に敷かれた布団の中で、清野は眠っていた。


「おやすみなさい、清野さん」


小さくそう声をかけて振り向くと、鼻をかすりそうな距離に三成が立っていた。


「み、三成さん…」


「あまり気にかけるなと言ったはずだぞ。その女子からは明朝話を聞くことになっている。親しくするな」


「うん…でもやっぱ気になっちゃうから…。三成さん?」


常に冷めた目をしている三成の鋭すぎる切れ長の瞳に、熱い炎が燈っていた。

皆からは見られないように、物置小屋のような小さな部屋に押し込まれると膝の間に三成の膝が入ってきて強引に割られ、優しい手が太股を這った。


「な、なに、三成さ…っ」


「政宗や謙信にもここを触られたのだろう?…消毒だ」


河原で三成に触れられたことを思い出してしまい、慌てて手を止めるようにして握りこんだ。


「そんな、に、触られて、ないもん…っ」


「政宗はそなたの太股にやけに執心している。今後はこんな風に触れられることなどないように気をつけろ」


背の高い三成が腰を屈めて桃をきつく抱き寄せると、お尻を撫でられて思わず大きな声が出る。


「ひゃんっ!」


「大きな声を上げるな。鼻の良い奴が嗅ぎつけてくる」


――強引にこんな小さな部屋に連れ込んだ割にはその手つきは驚くほど優しく、

つねったり叩いたりして何とかお尻から手を引き剥がすと、自分の頬に頬ずりするようにして大きな手を擦りつけた。


「桃…」


「あのね、私…三成さんの手が大好きなの。優しくって大きくって…大好き」


「…あまり挑発するな。俺を昂らせて後悔するのは、そなただぞ」


「ん…ん…」


斜めに重なった唇は手つきとは裏腹に強引で、激しい。

そのギャップにまた参ってしまって、頬を包み込んでいる手が熱く、浴衣が乱れてしまって恥ずかしくなってきた時――


「桃姫、桃姫は何処に!?」


――鼻の良い奴が嗅ぎつけてきて、三成が息をつきながら桃から離れた。


「ほら来たぞ。先に行け」
< 219 / 671 >

この作品をシェア

pagetop