優しい手①~戦国:石田三成~【完】
桃と清野がきゃっきゃとはしゃぐ声が聴こえる。


謙信はまた馬に寄りかかりながら唇を尖らせていた。


「みんなそれでも男なのかなあ、好きな女子が水浴びしているっていうのに」


「…貴公は堂々としすぎだ。言っておくが桃のは、は…裸など絶対に見せぬ」


「え?もう全部見たも同然なんだけど」


心を惑わすことばかりを言って三成の心を尖らせると、そわそわしている政宗に声をかけた。


「皆で覗けば同罪なんじゃない?いずれは私だけのものになるけど、今日は許してあげるよ」


「誰が貴公のものだ!」


胸ぐらを掴みそうな勢いで政宗が噛みつくと…


「みんなー、すっごい気持ちよかったよー!」


クロを連れた桃が裸足で戻って来た。


「お、おい…」


政宗がそう呟いたのは…


桃が着ているTシャツが、身体の線にぴったりとくっついて透けて見えそうになっていたからだ。


「いいね、眼福眼福。拝みたい気分だよ」


しかし桃はそんな男共の興奮する様に気付くことなく、そのまま近くに岩の腰かけると髪から水分を搾り取る。


「も、桃…」


「あ、三成さんも入っておいでよ。私は身体が渇くまでここにいるから」


…太股はもちろん剥きだしだ。


「桃姫っ、そなたのその悩殺的な姿、俺は頭がおかしくなってしまいそうだ!」


興奮した政宗が近寄ってこようとするのを家臣の小十郎が押しとどめ、兼続が明快に笑った。


「いけませんぞ政宗公!桃姫の心も身体も我が殿のもの!どうか目で愛でるだけでご満足を!」


「そうだよ、私のものなんだから見ちゃ駄目。ほら姫、この炎天下でもう乾いたでしょ?着替えておいでよ」


それまで桃に近寄りもせず馬に寄りかかっていた謙信に言われ、そして傍らに立っていた三成に小さな声で、


「身体の線が見えているぞ」


と指摘され…慌てて自身の身体を見下ろした桃がバッグを胸に握りしめて後ずさりしながら林に駆け込む。


「初々しいなあ。三成も興奮したんじゃない?」


余裕綽々の謙信に、三成は鼻を鳴らした。


「隠れ助平の貴公ほどではない」

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