優しい手①~戦国:石田三成~【完】
自分たちが泉に入っている間に桃が襲われるわけにはいかず、ようやく腰を上げた謙信が桃の肩を抱いて再び泉の方向へと促した。


「私たちも入るけど、全部脱ぐわけじゃないから傍に居てもらえる?それとも全部見たい?」


「えっ、う、ううん、ちょっと離れたとこに居るから!」


危ない危ない、と思いつつ、先頭を行く幸村に追いつくと、誰よりも血に濡れていたので手に握っていたハンカチを返してもらうと泉に浸して血を洗い流した


「幸村さん、脱いで脱いで。身体拭いてあげる!」


「!も、桃姫…っ」


「ああほら髪にも血がついてる…。ちょっと怖いけど頑張るから」


がちがちになってしまった幸村を皆が笑ったが、政宗はおどけて見せた。


「俺も前線で戦うんだったな、そうすれば桃姫から身体を拭いてもらえたのに」


「貴公はそんなことばかり考えているな」


がばっと上半身脱いで手拭いを水に浸し、身体を拭く三成につい桃の視線が張り付く。


清野は恥ずかしがってずっと俯いていたが、男の免疫のない桃もそうしていたかったのだが幸村の血の濡れようはひどく、鋼のような身体の幸村の肩に手を置いて背中を拭き始めた。


「ああ、気持ちいいね。私も入りたいけど宿まで我慢しなきゃね」


手を止めずに振り仰ぐと謙信も三成と同じように上半身脱ぎ、片膝をついて泉の水を手で掬い、頭から水を被っていた。


――そうしながら髪をかき上げて、ひとつ息をつく。


ぽとぽとと雫が落ちて、壮絶な美しさに息を呑んだ。


目を離せないでいると三成からの視線を感じ、慌てふためきながら立ち上がって、すらりとした長い腕を取った。


「三成さんも拭いてあげる。人を斬るなんて…大変だったね」


「…慣れている。そなたに血の匂いをつけるわけにはいかぬ、俺は大丈夫だ」


少し素っ気なくされて、

やはり先ほど謙信にぽーっとなってしまったことを咎められた気分になり、しゅんとなると、幸村がわざと明るい声を上げて桃を励ました。


「姫、今少しのご辛抱です。1日も走れば越後の領土へと入ります故、刺客の心配もぐっと減ります」


「うん…頑張ろうね!」


三成と目を合わせられなくなっていた。
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