優しい手①~戦国:石田三成~【完】
桃は湯着を着て心地よい冷水の中に入り、大きく息をつく。


「熱中症って怖いね、越後に着くまで気をつけなきゃ。…清野さん?」


終始ぼうっとしている清野が気にかかり、傍に寄って行くと何故か距離を取られた。


「清野さん?どうしたの?」


「桃さん…私…謙信様と…」


「え?」


顔を洗うのに夢中になっていた桃に清野の声は届かず、聞き返すと清野は自身の身体を抱きしめて身震いした。


「私…あんなの、はじめてで…」


「え?何がはじめてなの?」


ますますわけがわからず戸惑っていると…


清野が胸の谷間に手を入れて、何かを取り出した。


「桃さん…私はもう駄目。くの一としても、もう駄目…。せめてあなただけでも…!」


「え……や、きゃぁーーっ!!!」


――両目に何かを吹きかけられた。


ものすごく痛くて、絶えず涙が出てきて、目を覆いながら絶叫した。


「桃さん、私を恨んでもいいわ、あなたを三河へ連れて行く!」


「清野さん、目が、目が見えない!」


「半蔵!」


――その名を聞いたことがあった。

幸村が戦い、謙信が追い払った忍びの名。


つまり清野は…清野は…


「桃!」


「三成さん!?助けて!」


声のする方へ叫ぶと、清野の叫び声が聴こえた。


「くっ、あと少しの所で…!」


「清野、とうとう正体を現したな!」


小さな声が、耳元で聞こえた。


“ごめんなさい”


――一瞬目の痛さも忘れ、硬直していると、三成から抱きしめられた。


「桃、何をされた!?目が見えないのか!?」


「痛いの、目が、目が痛いの!」


騒然とする風呂場に続々と政宗たちがなだれ込んでくる。


「やはりあの女子、三河の者だったか!」


「目が…目が…!」


「心配するな、すぐに見えるようになる!」


ひたすら抱きしめてくれて、ひたすらしがみついていると、謙信の声がした。


「半蔵を見つけて深手を負わせたよ。だけど逃げられた。桃姫…私のせいだ、ごめんね」


何故か謙信に謝られたが、桃には理由がわからなかった。
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