優しい手①~戦国:石田三成~【完】
皆がいつも以上に優しくしてくれる。

桃の気持ちもだんだん落ち着いてきて、そんな中夕飯タイムは訪れた。


「えと、お箸…お箸…」


目隠しをするように布を目で覆った桃が膳の上の箸を探す。

それこそ皆がはらはらしながら様子を見守り、右隣に座っていた三成が箸を捜す桃の手の傍に箸を置いた。


「あっ、あった!」


ぱあっと笑顔になって可憐な唇を綻ばせる桃に一同もでれっとなり、互いの顔を見合わせると慌てて表情を引き締めた。


「次は…ご飯ご飯……あれ?」


左隣に座っていた謙信が、笑いをかみ殺しながら三成とは逆にお茶碗を膳から取り出し、桃を慌てさせる。


「ご飯がないよ?ご飯食べないと元気出ないよやだやだ!」


「姫、私のをあげるよ。口を開いてごらん」


「ほんと?じゃあ一口頂きまーす。あーん」


大きく口を開けた桃に餌付けをするようにしてご飯を入れてあげて、どこがツボに入ったのか、謙信は皆から顔を背けると肩を震わせて笑っていた。


「謙信公、少々悪ふざけが過ぎるぞ。桃、手に持たせてやる」


「え?え?元々私の分もったの?も、謙信さん意地悪!」


「ごめ…、姫が…あ、あんまりにも可愛かったものだから……」


まだ笑いのループに囚われている謙信は口元を手で覆いながら桃の頭を撫でた。


「姫は強いね、あんな目に遭ったというのにとても元気だ」


「うん、それだけが取り柄だから。…でも…みんなの言うとおり、清野さんは悪い人だったんだね…。みんな、疑ってごめんなさい」


素直に頭を下げると、政宗が豪快に笑った。


「そうだな、気付いていなかったのは桃姫だけだな!」


「これからは気を付けます…」


――桃はまだ湯着の上から長い羽織を着させられた状態で、この季節ですでに乾いているものの、ちゃんと浴衣は着たい。


けれど、この目では一人で着ることは難しい。


「あ、あのねみんな…お願いがあるの」


「はっ、何なりと!」


幸村の快活な声が響き、安堵しながら切り出した。


「誰かに着替えを手伝ってほしいんだけど…」


全員が色めき立つ。
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