優しい手①~戦国:石田三成~【完】
謙信の腕に抱かれて戻ってきた桃に一同が駆け寄った。


「ち、父上、桃姫は一体…!?」


「散歩してたら倒れたような音がしてね。行ってみたら、この通り」


…きちんと浴衣を着せられて、息も絶え絶えな桃は謙信に何かを言おうとして口を開くが、荒い息しか出て来ない。


兼続が隣の空き部屋に急いで布団を敷き、桃を横たえさせた。


「けん、しん、さ…」


「話さない方がいいよ。三成に知られてもいいの?」


顔を寄せて小声で囁いた謙信の秀麗なる美貌はいたずらな光に満ちていて、思わず袖を握ると首を振った。


「やだ、やだよ…」


「じゃあしばらく横になってた方がいい。それとも…もっと気持ち良くなりたい?」


――小声で話す二人に三成はいらいらしつつ、腰を上げて部屋を出る一行について行かず、問答無用で襖を閉めた。


「三成、さん…?」


「…来てはならぬと言っただろう?」


「ごめんなさい…。あの…残されるのがいやだったの」


その桃のか細い声に、三成は過剰に反応した。


乱暴に布団を捲って馬乗りになり、

驚いて言葉の出ない桃の両頬を抑えると、目で射抜くようにして桃の態度を問うた。


「俺か謙信か…どちらのためにここまで来たんだ?桃、答えろ」


「…私…わからないの。気がついたらここまで来ちゃってたの」


泣きそうな顔をして顔を逸らした桃の久しぶりに見た顔は三成を熱くさせた。


しかも何故か桃の胸の谷間に… 唇の痕がある。


「…これは…謙信か?」


「!やだ、見ないで!」


羽交い締めにして浴衣を剥ぐと、胸の谷間だけではなく、全体に至って花びらのような唇の痕は散りばめられていて、


“やはり…”と思い、隠そうとがむしゃらに手を動かす桃をきつく抱きしめる。


「謙信のため…なのか?」


「ちが…っ、2人のことが心配だったの…!三成さん、信じて!」


悔し涙を零す桃の表情に偽りの色はなく、かっとなった心は平静を取り戻し、髪を優しく撫でた。


「桃…すまぬ」


「ううん…どっちつかずでごめんなさい…。私…私自身がわかんない…」


2人共を、愛してる…
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