優しい手①~戦国:石田三成~【完】
翌朝、桃を含め全員が早朝から床を出て身支度を整え始めた。


「景勝よ…その…昨晩妙な声が聴こえなかったか?」


井戸の前で景虎は頭に水を被り、水しぶきを震わせてそれが景勝の顔にかかって渋面を作らせ、

景勝は相変わらず無言の多い中、以外にも返答があって景虎を驚かせた。


「桃姫が…石田三成に胸を揉まれていた」


「な…、なに!?」


見たことそのままをストレートに口にして景虎を唖然とさせると、確かにあの声は艶やかなものだったと思い返し、顔を真っ赤にさせる。


「そんな…!桃姫は父上の…」


「まだ決まったことではない。桃姫は今悩んでおられるのだ。父上を選ぶか、石田三成を選ぶか」


その選択肢に自分たちは入っていないけれど――


景虎は服を着て居住まいを正すと、それでもなお顔を赤くしたままつるつるの顎を撫でながら唸る。


「そうか…。なあ、桃姫のお顔をよく見たか?お可愛らしい大きな瞳をしていて、俺は胸が高鳴ったぞ」


「馬鹿を言うな。桃姫は我々の母上とおなりになるお方。懸想などしてはならぬ」


「なに!?お、俺は懸想など…!」


軽い言い合いをしていると建物から桃が出てきて、例の不思議な服を着た桃に2人が軽く頭を下げる。

…目線はむき出しの太股。


「トラちゃんカッちゃんおはよう!わ…、なんか、照れるね。2人ともすっごくかっこいいし」


「お、おはようございまする!も、桃姫、そのお召し物は・・・」


この時代には無いセーラー服。

とても珍しいものだし、女子が脚を剥き出しにするなど絶対にない日本で桃は異彩を放った格好をしていて、

だが肝心の桃は軽くひらりと回転して全体を2人に見せるとにこっと笑った。


「これが私の正装なの。セーラー服って言うんだよ、可愛いでしょ?」


…桃姫が可愛い。

そう言いかけて景勝から肩を強く肩で押されて正気に返った景虎の前に桃が来ると、井戸水を桶で汲んで豪快に顔を洗った。


「わ、気持ちいー!2人とも鎧脱いだんだね、そっちのがいいよ!」


「あ、ありがとうございます」


元気で明るく朗らかな桃に、景勝の表情も緩む。


まさに天女。そう思った。
< 331 / 671 >

この作品をシェア

pagetop