優しい手①~戦国:石田三成~【完】
ちゃんと自分の目で見てご飯が食べられる…

たったそれだけが桃を猛烈に感動させていた。


「お米が真っ白!甘いしおいしー!わ、お味噌汁にお豆腐入ってる!おいしー!」


全てに感激していちいち声を上げる桃に、各々が手を止めながら頬を緩める。


景虎の表情は誰から見ても桃のことをうっとりした目つきで見ていたし、景勝は謙信の顔を無表情にさせたような美貌だが、何度も桃を盗み見していて…


「…おやおや?これは大変なことが起きたかな。親子で骨肉の争いはしたくないなあ」


謙信が茶を啜りながらにまにま笑い、とぼけた声で言うと、桃の箸が止まった。


「え!?喧嘩しちゃったの!?駄目だよ仲良くしなきゃ!」


「け、喧嘩などしておりませぬ!父上、言いがかりはお止め下さい!」


「えー?言いがかりじゃないんだけどなあ。まあいいや、私と戦う気があるのならいつでも言ってね」


…景勝も黙ってはいたが…耳が赤い。


和やかなムードに三成一人がマイペースに箸を進めていた。


――そして食事を終えて快晴の中、また桃だけが出遅れて外に出ると、謙信が馬の鼻面に触れながら顔を寄せて例の如く話しかけている。

桃もそれに倣い、姿を見た途端興奮して鼻を鳴らすクロの鼻面を撫でながら言い聞かせた。


「もう飛ばしても大丈夫だよクロちゃん。今まで丁寧に走ってくれてありがとね、ガンガン飛ばしてくよ!」


「ぶるるるるん!」


肩に鼻を擦りつけてくるクロの身体を撫でながら、三成の前にひらりと騎乗した。


「また前に乗るのか?」


「後ろはやだもん、気持ちよくないから」


「…俺は桃に後ろから乗って気持ちよくなりたい」


――しばらく意味を考えて、ようやく意味が分かってカーッと顔を赤くさせると、手綱を握った三成が先陣を切って駆けだした。


「も、もうっ、三成さん!」


「駄目か?謙信には乗らせぬぞ、そなたに乗れるのは俺だけだ」


なおも続く愛の囁きに、女としての喜びが湧き上がって来るが…

追いついた謙信がにこ、と笑いかけてくるとまたドキっとして…


相変らず自分の心に自信を持つことができず、ひたすら前を向いて駆けた。
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