優しい手①~戦国:石田三成~【完】
城下町――

物資や物流で栄え、活気に溢れ、なおかつ上品さを兼ね備える街を通る。


桃が盲目の時にここを通った時にそれを見ていた住人たちが、凱旋する謙信たちに快哉の声を上げた。


「謙信公が武田信玄を討った!」


「さすがは上杉謙信公!!」


謙信の前に乗っていた桃がそのすごさに圧倒されていると、人々は今度は桃に注目して首を傾げた。


「あのお方は…両目が不自由ではなかったのか?なんとお可愛らしい…!戦場にまでお連れするとは…そこまで愛でておられるとは!」


「噂では夜叉の如く謙信公と共に戦われたらしい。毘沙門天が遣わした女子らしいぞ。越後は安泰だ!」


怒号、とも言えるほどの人々の熱気・興奮が肌にびりびりと伝わって来て桃が怖気づいていると、謙信は桃の手を取って二人羽織のようにして小さな手を人々に向けて振った。


「謙信さん、私、戦ってない…」


「あれでいいんだよ。今最高に士気が高まって皆が喜びに溢れてる。嘘も方便、って言うよね」


小さく舌を出して笑った謙信が可愛くてつい笑みを誘われると、小さな女の子が駆け寄って来て、慌てて手綱を引くと馬を止めた。


「お姫様ー!これ!」


紅葉のような手にはピンク色のノアザミの花束。

棘は綺麗に切り落としてあり、頬を紅潮させて手を震わせながら見上げてくる女の子の前でひらりと馬を下りた。


「ありがとう!わあ、可愛いね、摘んできてくれたの?棘は刺さらなかった?私の部屋に飾らせてもらうね、ありがとね!」


まだ5,6歳の女の子は桃から頭を撫でてもらって有頂天になり、

そして憧れて止まない謙信が柔和な笑みを浮かべて自分を見つめていることに気付き、黄色い声を上げながら走り去って行ってしまった。


「桃、おいで」


片手にノアザミを持ったまま謙信の手を借りて騎乗すると、一行が城に向けて動き出す。


「民衆の心を掴むのが上手だね、明日には桃の話題で城下町は騒然となってるかもよ」


「またまたー!謙信さん、お腹空いちゃった!あとお風呂!」


「お風呂?じゃあ…また私が手伝ってあげるよ」


耳元で囁かれて腰砕けになりそうになって、三成の名を何度も頭の中で念じた。

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