優しい手①~戦国:石田三成~【完】
目の前の豪華な刺身の盛り合わせや煮豆、お味噌汁、山菜などに桃の目が輝く。


「食べていいの?いいよね!?」


「沢山お食べ。少し太った方が私も嬉しいからね」


…微妙に気にかかることを言われたが、早速お味噌汁を呑んで、刺身を食べて、ご飯を食べて…


夢中になって食べている様子を見ているだけでも楽しくて、

謙信の前には、謙信と盃を交わそうと続々と家臣たちが詰め寄って長い列を作っていた。


「此度は激しい戦いでした。ですが我らはほとんど兵を失わなかった。これは夜叉姫のおかげですかな」


「え?私のこと?」


「ええ、あなた様が居たからこそ我が軍は勝利したのです。どうかこの春日山城にて一生我らの天女としてお過ごしくださいませ」


「待ちなさい、信玄を討ったのは私なんだけどなあ?ほら、桃は続けていいよ」


「あ、はい!」


もりもりと食べながら謙信を眺めていたが…

列は尋常ではないほど長く、皆と盃を交わしているが…酔った様子は微塵もない。


「謙信さん…大丈夫かなあ」


「父上は酔ったことなどありません」


いつの間にか上座のすぐそばに来ていた景虎と景勝が桃に盃を手渡した。


「あ、あの…私お酒はちょっと…」


「舐める程度で構いません。共に盃を交わし、勝利に酔いましょう」


「あ、うん、そうだね」


それならば、三成にも傍に居てほしい。


「三成さん、ここに来てもらっていい?」


兼続と壁の華となっていた三成に声をかけると、列をかきわけて景勝の隣に座り、盃を手にしていた桃に眉を潜めた。


「それはやめておいた方がいい。何度ひどい目に遭ったと…」


「ちょこっと舐めるだけでいいんだって。だから大丈夫だよー」


「じゃあ私も加わろうかな」


詰め寄る家臣団を少しだけ手で制して桃に向き直ると、柔和な笑みで盃に並々と酒を注いだ。


「あ…」


「舐めるだけでいいよ、これは気にしないで」


――謙信が盃を掲げた。


家臣団も一斉に盃を掲げた。


「上杉の勝利と桃姫に。乾杯」


「乾杯!」


勢いに呑まれ、桃は酒を飲み干してしまった。
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