優しい手①~戦国:石田三成~【完】
一気に全身が赤くなり、手で風を顔に送りながら、目がとろんとなった。


「なんか、暑いね!…あれ?みんなの顔が…ぐにゃぐにゃ…」


「…だから止めろと言ったのに…」


身体を支えられなくなった桃はそのまま前に倒れそうになり、謙信から肩を抱かれて膝枕をされた。


「もうちょっと我慢していて。後で部屋に連れて行ってあげるからね」


「ふぁい…」


謙信の膝枕ですやすやと寝入ってしまった。

女子の寝顔をこんな明るい場所で見たことのない家臣団含め景虎や景勝も思わず食い入るように見つめてしまい、

そして三成の咳払いで我に返って、皆が無理矢理視線を桃から剥いだ。


「桃が酒に弱いことは知っていただろう?」


「いやあ、形式だけでもと思って注いだなけど…。飲んだのは桃だよ、私のせいじゃないからね」


そう言いながら桃に視線を落とし、髪を撫でる謙信の手を鞘で叩き落としてしまいたかった。

謙信はぐっと耐えて酒を呷る三成にほくそ笑み、兼続を呼び寄せると小さな声で命を出した。


「宴はこのまましていていいけど、私と桃は抜けるよ」


「はっ!後はお任せ下さい」


――ちらりと三成を見た。


一瞬ばちばちと火花が散って、ふっと笑った謙信が桃を抱き上げて部屋を出て行く。


「お、落ち着け三成」


「…何のことだ?」


兼続に腕を掴まれて、ようやく自分が刀を手に腰を浮かせていたことに気が付き、どかっと腰を下ろしながらまた酒を呷る。


「殿は酔った女子に手など出さぬ。義に熱い故、絶対に有り得ぬから安心しろ」


「そうか?今にも襲いそうな瞳をしていたぞ」


「父上を侮辱するな!」


景虎が食ってかかってきたが…実際は景虎も三成と同じ印象を謙信に抱いていた。


――だが、桃が選ぶべきこと。

だから悔いが残らないようにしなければ――


「三成様…」


黙り込む三成に、そう声をかけてくる者が在った。


「…お園」


深く愛していた女子。

儚く手折れてしまいそうな薄幸の女子。


「どうぞ、お酌を」


「あ、ああ」


まともに見ることができなかった。
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