優しい手①~戦国:石田三成~【完】
桃の身体を抱きしめたまま謙信は祈り続けて朝を迎え、襖の外から兼続の声が聴こえた。


「殿、ええと…桃姫もそちらに?」


「うん、居るよ」


「そ、それは失礼つかまつりました!後程朝餉をご用意いたしますので、それまでゆるりとお待ちくださいませ」


「うん、ありがとう」


――あれから片時も離さずに桃を抱きしめ、窓から差し込む陽光に身体が照らされて、白い胸が見えた。


「ふふ、小さくなんかないのにね」


起きた時きっと今の姿を恥ずかしがるだろう。

そう思った謙信は身体を起こして浴衣を引き寄せると、桃の額を小さく小突いた。


「桃、風邪を引くよ。そろそろ起きないと、皆に見られてしまうんだけどなあ」


「ん……。もう…朝…?」


「まあ私はいいんだけど、皆に見られるのは癪だからこれを着てほしいな」


まだぼうっとしている桃の前に浴衣をぴらぴらと見せると、かっと目が見開いた。


「あ、やだ!私…裸!?や、見ないで!!」


「もうばっちり見ちゃってるんだけど…ほら、着せてあげるから起きて」


両手で胸を庇って両膝を立てて身体を丸めるようにして隠した桃の身体に浴衣をかけてやると、腕を伸ばして袖を通し、今度は帯をぴらぴらと目の前で揺らして見せた。


「これは?」


「じ、自分でできます…」


――瞳を細めて笑う謙信の姿もまた…昨晩と同様乱れていて、酒が入っていたとはいえ、桃は昨晩の出来事をばっちり覚えていた。


が…


「ねえ、昨晩の記憶ってあるの?」


「え?!あの…お、覚えてません…」


「そっか、それは残念。桃からすっごいことしてもらったんだけど…覚えてないの?」


肩を抱かれて寄りかからせられると、またふわりと乳香の香りがして、目を閉じながら頷いた。


「う、うん…」


「じゃあ私がしたことも覚えてないんだね?じゃあ次は酔ってない時に同じことをするからね」


不意打ちでキスをされると浴衣を正しながら謙信が起き上がり、部屋の外へと出て行く。


「も、もう…心臓、痛い…」


謙信が愛しい。


三成も愛しい。


考えても、答えはいつまでも出ない。
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