優しい手①~戦国:石田三成~【完】
三成が酔いが冷めたような表情で、目の前に座ったお園を見つめる。


――色白で、いかにも病弱そうな薄幸の美女。

出会った時は、夢中になった女子のはずだったが…今となってはその当時の感情も思い出せない。


「そなたから去っていったんだ。今さら俺を惑わせるな」


「身分の違いが私には耐えられなかったのです。ですが三成様…あなた様と再会して、気付いたのです。私はやはりあなた様を…」


「しつこい。俺は桃姫しか見えておらぬ。早く出て行け、でないと……、っ!」


――言葉を紡ごうとする唇を、唇で塞がれた。


大胆なお園の行動に身体が固まってしまい、思考も停止して、ぎゅっと瞳を閉じた。


「お待ちしております。あなた様が桃姫様を忘れる日をずっとお待ちしております…」


半ば押し倒されるような形になって、積極的に舌を絡められて身動きが取れなくなった時――


「三成殿、殿と一戦交えますので判定を……………し、失礼しました!」


「っ、幸村と……桃、姫…」


――またもや見られたくない光景を、桃が見ていた。


唇はきゅっと結ばれて、冷めた瞳をしていた。


そして何も言わずに幸村の手を握って、部屋から去って行く。


「桃姫!」


「私の名前…呼ばないで」


冷めた声――

お園を突き飛ばすと立ち上がり、後を追いかける。


「桃姫、あれは…」


「お園さんとよりを戻すんでしょ?よかったね、ずっと忘れられなかった人だもんね。…幸せになってね」


「…俺は、そなたを…」


「ふざけないで。もういいから…何も思い出さなくていいよ。お願い、もう私に関わらないで」


――振り向いてもくれない。

だが三成は、止まることはできなかった。


幸村が沈痛な表情をしていたが、それよりも何よりも、プライドを捨てても桃のことだけは、絶対に諦めない。


「桃姫!」


「呼ばないでって言ってるでしょ?!私は謙信さんのお嫁さんになるの。これでやっと…三成さんを忘れられる…」


にこ、と儚く微笑んだ。

無理矢理な笑顔だと、わかっていた。


――桃の手を強く引いて、空き部屋に連れ込んだ。
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